レーザー脱毛ってどんな原理?体毛が抜ける理由

レーザーって何だろう?

レーザーの光

レーザーという特殊な光は、『Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation』の頭文字を取ってLASERと呼ばれています。
宝石やダイオードなどにエネルギーを与えて原子を励起状態というエネルギーを蓄えた状態にします。
そして、励起状態から元の状態に戻る時に放出される光が近くにある同じく励起状態の物質に当たると、それが刺激となり光が放出されます。
これが連鎖的に反応して光が増幅していくのです。
このようにして放出される光をレーザーといいます。

レーザーには特殊な特徴があります。
単色性、指向性、可干渉性があるのです。
つまり1つの波長の光が、真っすぐに進み、位相も揃っているのです。
波長が1つということは狙った対象のみに吸収させることが可能になるのです。
例えば皮膚には吸収されず狙った体毛だけに吸収されたらどうでしょう。
吸収された光は熱に変わります。
これを利用して体毛だけを熱することが出来るのであれば、その周りにいる細胞を破壊することが出来るでしょう。
レーザー脱毛はレーザーの持つこの1つの波長の光という特徴を利用しているのです。

波長によって吸収されやすさと深達度が違う!

最近のレーザー脱毛で扱う波長は3つあります。
755nmのアレキサンドライトレーザー、800nm程度のダイオードレーザー、1064nmのヤグレーザーです。
人の目で見える光を可視光線と言いますが、アレキサンドライトレーザーやダイオードレーザーは赤色として認識できる限界くらいの波長です。
ヤグレーザーまで波長が長くなると赤外線と呼ばれます。

皮膚の褐色や体毛の黒い色はメラニンという色素です。
この色素は紫外線や可視光線をよく吸収します。
そのため、アレキサンドライトレーザーやダイオードレーザーがよく吸収されます。

この吸光度の問題だけでなく、波長にはもう一つ考えるべきことがあります。
これは深達性です。
波長が短いと浅い部位で吸収されやすく、長いと深部まで届くのです。
そのためヤグレーザーは深部の毛根を狙い打ちするのが得意となります。
深い部位にある男性のヒゲや硬毛化した体毛にヤグレーザーが向いているのはこのためなのです。

狙った部位のみを破壊する方法とは・・・

ある狙った対象のみを破壊するにはどうすれば良いのでしょうか。
それはその対象のみに十分な熱を限局して与える必要があります。
さらに周りに無駄な熱を与えてしまってはいけません。
これには以下の3つの要素を考える必要があります。

①波長、②時間、③エネルギーです。
この理論を『selective photothermolysis(選択的光熱融解)』といいます。
これによって医療脱毛を行ったり、シミを消すような芸当が出来るようになったのです。

①波長

吸光度と深達度から体毛に吸収されやすい最適な波長を選択します。
上記で解説したように、アレキサンドライトレーザー、ダイオードレーザー、ヤグレーザーが主役となります。

②照射時間

照射時間はその対象から熱が逃げる時間を考慮します。
この時間をthermal relaxation time(熱緩和時間)といいます。
熱が逃げる時間を与えずに、強く照射して対象の温度を上げるのです。
そのため、レーザー照射時間をこの時間内のパルス波にする必要があります。
メラニンが含まれている体毛のthermal relaxation time は40〜100 msec 程度です。
そのため、レーザー脱毛ではパルス幅は50 msec程度以下が良いと考えることができます。
しかし、メラニンは体毛だけでなく表皮にも存在します。
アレキサンドライトレーザーやダイオードレーザーでは表皮のメラニンでも熱が発生してしまうのです。
表皮のthermal relaxation timeは3〜10 msec程度です。
これでは表皮全体に熱が伝播していくことでしょう。
この問題をクリアするために冷却装置の開発が行われました。
レーザーの照射と同時にクーリングを行うのです。
表皮を冷却しながらレーザーを照射することで表皮の温度上昇を抑え込むのです。
冷却装置にも色々な種類がありますが、これはまたの機会にお話しましょう。

③エネルギー量(フルエンス)

単位面積あたりのエネルギー量から対象物で発生する熱量が決まります。
従来は30J/cm2程度の高エネルギーでのショット式の照射が盛んでしたが、最近は7J/cm2程度の低出力レーザーを高速照射する蓄熱式レーザーが開発されました。
出力が弱いということは熱が対象以外に漏れてしまうと考えられますが、表皮のクーリング時間も多く稼げます。
このようにしてジワジワと体毛の温度をあげることで無駄な熱損傷を回避することが出来るようになったのです。

モアナレーザークリニックのレーザー機器の特徴は???

ハワイの夕日

波長について

当院のレーザー機器は医療脱毛で使う3つの波長全てをブレンドしています。
これは熱の発生を散らす目的です。
selective photothermolysis(選択的光熱融解) の理論では狙った部位のみに熱を発生させることが大切です。
熱の発生を散らすために3種類をブレンドするのは一見矛盾した方法に見えます。
レーザーをブレンドすることで色々な部位で熱が発生します。
ここで考えなければならないのは発毛に関わる細胞がどこにいるのかということです。
体毛の一番根元の部分に毛包があります。
毛包には毛乳頭や毛母細胞など発毛に関わる細胞がいます。
これを熱変性させるには体毛の深部を破壊する必要があります。
そして、これに必要なエネルギーは多く、これが侵害受容器を刺激して痛みとして感じてしまいます。
では、深部を破壊するのではなく、体毛の浅い部位のみの破壊だとどうでしょう。
これならエネルギー量が少なくてすみます。
実は浅い部位にはバルジ領域と言われる体毛の幹細胞が生存している領域があるのです。
当院のレーザーは体毛全体をターゲットとしてじんわりと温度を上げることでバルジ領域の幹細胞を不活化することが目的のレーザーなのです。
そのため、波長の異なる3つのレーザーをブレンドして体毛の種類によって深さの異なるバルジ領域の温度を上げているのです。

蓄熱式という原理

また、1回の照射エネルギーを低くして高速照射を行うとどうなるでしょうか。
せっかく体毛で発生した熱が体毛の周りに伝播してしまいます。
これも selective photothermolysis(選択的光熱融解) の理論では 不利に作用しそうです。
周りの無関係な組織にダメージを与えてしまいそうだからです。
しかし、低エネルギーであれば周りにダメージを与えることはありませんのでこれは問題にならないのです。
それでもやっぱり毛母細胞は熱量不足で破壊できそうにありません。
ここでバルジ領域と毛乳頭や毛母細胞には大きな違いがあります。
実はバルジ領域は低温でも不活化できるのです。
これを利用して低出力、高速照射という方法でバルジ領域を60度程度まで上昇させることで脱毛が可能だったのです。

当院のレーザー機器は10Hz、つまり1秒間に10回もの照射を行うことができます。
これを実現するためには日本製の電源部が重要な働きをしています。
照射速度が速すぎると発生するレーザーのエネルギーが不安定になってしまうからです。
この問題も上手くクリアできるようになった現在、脱毛は熱破壊式ではなく蓄熱式が標準となっていくと私は考えます。

施術の速さ

当院の蓄熱式レーザーはレーザーを発生させる部位が大きいのも特徴です。
レーザーを照射する銃のような部品をハンドピースと呼びます。
このハンドピースから照射されるレーザーの量が多いのです。
そのため単位面積当たりのエネルギーが同じでも照射面積が大きくなり、脱毛の施術速度が速くなるのです。
この脱毛速度の速さは特筆すべき特徴となります。
また、それだけではなく当院はレーザー機器の台数を多くご用意しております。
そのため、ナースの都合がつけば2人がかりで照射が可能になります。

当院のレーザー機器の欠点とは・・・

照射が早いということは冷却性能も高くなければなりません。
ハイパワー冷却システムが必要になります。
このために当院のレーザー機器は音が大きいという弱点があります。
しかも台数が多いのです。
常にゴーっという大きな音が冷却システムのために発生しております。
こればっかりは脱毛性能を高めると仕方ない部分なのかもしれませんね。

消費電力も多いので、太陽光などのクリーンエネルギーで稼働出来れば良いのですが、賃貸ビルのテナントなので自由が利きません。
少しばかり心が痛みます。

このようにして当院のレーザー機器は極限まで痛くない脱毛を実現しているのです。

【この記事はモアナレーザークリニックの代表医師が自ら執筆しました。】
私の専門はAGAなどの発毛治療と手術麻酔です。
毛を生やす治療と痛みをなくす治療を得意としています。
痛みを最小限にしつつ発毛細胞を居なくするにはレーザーの使い方にコツがあります。