蓄熱式の照射方法はSHRと呼ばれています。
これは『Super Hair Removal』の略です。
言い換えるとスーパー脱毛です。
かなり大げさなネーミングですが、それまでの医療脱毛はショット式のみだったので、かなり革命的な方法だったことには違いありません。
当院のレーザー機器は両方の照射方法を行うことができます。
しかし、ショット式を選択する状況はほとんどないと考えられます。
ショット式の医療脱毛って何?
体毛の本体はどこにあると思いますか。
体毛は一番根元にある毛母細胞で作られています。
この毛根部をレーザーを使って熱で吹き飛ばせば脱毛できると思いますよね。
これはある意味正解なのです。
これを達成するためにショット式の脱毛器が開発されました。
これを実現するには1回の照射エネルギーを大きくして、深部にレーザーを到達させて、毛根に熱を与えて体毛を焼き切ることをします。
一気に熱された体毛は爆発するように皮膚から飛び出します。
これをポップアップ現象と呼びます。
しかし、これでは熱エネルギーによって軽い火傷の状態になることが多いです。
体毛を作る本体は毛根ではなかった!!
体毛をよく観察してみると成長期、退行期、休止期とヘアサイクルによって毛母細胞の深さが変わる現象が発見されました。
体毛を作る毛母細胞の位置がなぜ変わるのでしょうか。
もっと重要な何かが毛母細胞以外にあるのではないでしょうか。
これは重要な発見でした。
実は体毛を作る一番大切な部分はもっと浅いところにあったのです。
これをバルジ領域と言います。
このバルジ領域から毛母細胞の元となる細胞が深い部位まで降りて行っていたのです。
そのためヘアサイクルによって毛母細胞の位置が変わっていたのです。
つまり毛母細胞はバルジ領域に支配されていたのです。
この発見をレーザー脱毛に応用したのがSHRです。
蓄熱式脱毛(SHR)ではどこを狙う?
体毛を作る本体のバルジ領域を狙いましょう。
バルジ領域は浅いところにあります。
ここをターゲットにレーザーの設定を見直してみましょう。
弱い出力でも浅いところならエネルギーは十分届きます。
細胞はある程度の温度まで上昇するとアポトーシスという細胞死の現象を起こします。
ショット式のように一気に高温(200度程度)にしてポップアップまで行かなくても大丈夫です。
弱いエネルギーを何度か照射してみます。
このようにして50度~60度まで上昇させるとバルジ領域のアポトーシス(細胞死)を誘導することが出来るのです。
体毛は太さによって深さが大きく変わります。
産毛は浅く、太い体毛は深いのです。
そのため、数種類の波長をブレンドして、弱いレーザーを、複数回照射すれば蓄熱式という照射方法になるのです。
ショット式の方が良いって良く聞きますけど、どうなのでしょうか?
医学的にはショット式と蓄熱式で脱毛効果はほぼ変わりません。
毛根部をターゲットにするのか、バルジ領域をターゲットにするのかで脱毛成績は大きく変わらないのです。
しかし、産毛に関しては蓄熱式の方が効率的と分かっています。
ショット式にはメリットはないのです。
これを理解しているとショット式を使用する状況がほどんどないことに気づきます。
普段、ショット式に慣れている施術者はどうしてもポップアップ現象を確認したくなります。
そのため、ここは強く脱毛したいからショット式を選ぼうという間違った会話になるのです。
ショット式の利点はジェルを塗らなくても良いことです。
一方、蓄熱式ではジェルを塗ったり、拭き取ったりの手間や時間が必要になります。
このジェルの手間が採算性などに絡んでくるとショット式を選びたくなるのです。
実はショット式の医療脱毛は経営的な問題から選択されているのです。
これからの時代の医療脱毛は患者様に優しい蓄熱式になって行くと言えると思います。