レーザー脱毛器に詳しいモアナレーザークリニック総院長の田坂洋介が医師目線でレーザー機器について解説します。
使用波長は808nmと940nm
メディオアスターモノリスはエースクロピオン社(Asclepion Laser Technologies GmbH)が開発したメディオスターシリーズの最新機種です。
蓄熱式レーザー脱毛器といえばALMA社のソプラノシリーズとこのメディオスターシリーズが双璧でしょう。
使用しているレーザーはダイオードレーザーです。
モノリスの先代はメディオスターネクストプロです。
大きな違いは照射速度の違いです。
808nmは定番の脱毛の波長
この波長は脱毛では定番の波長です。
この波長は効率よく脱毛に作用します。
脱毛効率も良いでしょう。
メインの波長といえます。
940nmは深部を狙った脱毛の質を高める波長
一方、940nmという波長は面白い波長です。
これはダイオードレーザーですが、脱毛機器としては珍しい波長なのです。
この波長はヤグレーザーの1064nmを意識していると想像できます。
通常の808nmだけでは深部の脱毛効率が落ちてしまう可能性が高いです。
そのため、より長い波長のレーザーを検討した中で、あえてヤグレーザーではなく、940nmのダイオードレーザーを選択したと考えられます。
ショット式の場合はアレキサンドライトレーザーの750nm、ダイオードレーザーの810nm、ヤグレーザーの1064nmを使用します。
波長は長ければ長いほど、深部の毛根に作用できます。
ショット式の場合はこの3つの波長で毛根の深さに合わせて打ち分けするのです。
では、蓄熱式の場合はどうでしょうか。
実はショット式と蓄熱式ではレーザーのターゲットが違います。
ショット式ではターゲットは毛根です。
毛根の機能をレーザーで破壊します。
一方、蓄熱式ではターゲットはより浅い部位にあるバルジ領域です。
このように考えた時にショット式で使用するヤグレーザーは毛根には良いけれど、バルジ領域を狙う場合は深すぎる可能性もあるのかもしれません。
1064nmというヤグレーザーを敢えて採用せずに940nmを採用したのは面白い発想だと感じます。
ソプラノシリーズとメディオスターシリーズの脱毛成績を直接比較出来れば面白いと思います。
しかし、どちらの脱毛器も性能が高いため、脱毛効果や硬毛化の発生率などで大きな違いが出ないのかもしれません。
照射速度
メディオスターモノリスのハンドピースは4種類もあります。
①モノリス S :約 10 mm(縦)、約 10 mm(横)
②モノリス M :約 10 mm(縦)、約 15 mm(横)
③モノリス L :約 10 mm(縦)、約 30 mm(横)
④モノリス XL :約 31.6 mm(縦)、約 31.6 mm(横)
注目すべきはXLのハンドピースです。
約10cm2という巨大な照射口を持ったハンドピースです。
1発のレーザーで10cm2もの面積に照射が可能です。
ここまで大きい照射口を持った脱毛機器は珍しいです。
もし、これを高速で照射したらクーリング性能も追いつかないでしょうし、消費電力も大変なことになりそうです。
メーカー推奨の設定は3Hzです。
さすがに10Hzは不可能なのですね。
それでも1秒間に30cm2もの面積を照射できるのはさすが最新機種と言えると思います。
ライバルはソプラノシリーズ最新機種のチタニウムでしょうか。
メディオスターモノリスの特徴
808nmと940nmの2波長を使用。
大きな照射口でゆったりとした操作。
照射速度は早いので全身脱毛など面積が大きくても安心。
機器が高額だけど日本でも入手しやすい。
照射口を大きくしたことの思わぬ欠点とは
施術速度を上げるためにメディオスターモノリスは照射口を大きくする方向で進化しました。
しかし、これには思わぬ欠点があったのです。
蓄熱式レーザーではレーザー照射口を取り囲むように冷却部があります。
照射口が大きくなったことでハンドピースを動かす速度が遅くても照射できるようになりました。
しかし、そのことで皮膚の冷却が追い付かなくなったのです。
つまり、思いのほか痛いという現象が現れたのです。
そのため、メディオスターモノリスでは推奨フルエンスを下げるように設定されたのではないでしょうか。
スキントーンⅢ(日本人に多い肌の色)で5J/cm2辺りが推奨されています。
これ以上上げると痛みが強くなるのです。
ライバルのソプラノシリーズでは7J/cm2程度で照射が可能です。
照射口のサイズの割に施術速度がそれほど早くなっていないのです。
これを改善するには痛みを出さないために冷却システムの見直しが必要でしょう。
次回の進化の方向性は冷却システムにあると思います。
複数波長の蓄熱式が良いとされる理由とは?
波長が1つでも脱毛は可能です。
脱毛効率自体は波長が増えても変わりません。
それでも、全ての患者さまで同じように最高の結果を出せるわけではありません。
産毛や太く深い体毛、すでに他院の施術で硬毛化を起こしている患者さまなど様々な状況があると思います。
そのような時に複数波長は有利なのです。
複数波長はストライクゾーンが広いというイメージでしょうか。
多少、相手が悪くても戦えてしまう性能。
それが複数波長の魅力ではないでしょうか。
高速な蓄熱式短波長レーザーのみで戦うのではなく、ショット式レーザーで補って使い分けをする戦い方も正解です。
最初からメディオスターのような複数波長の蓄熱式で戦うのも正解です。
どちらも正解ですが、これからの時代はやはり複数波長の蓄熱式が主役になると私は感じます。