蓄熱式は痛くないけど効かないです。
やっぱり熱破壊式(ショット式)が確実で安全です。
このような話をよく耳にします。
これは本当なのでしょうか。
抜けが良い気がするというような感覚的な会話をしていても信用できませんよね。
それでは、蓄熱式と熱破壊式で実際に患者さまにご協力頂き脱毛効果の比較をしてみましょう。
今回も体毛に詳しいモアナレーザークリニックの総院長の田坂洋介が解説します。
低出力で高速照射するレーザー(蓄熱式)VS.高出力で低速照射するレーザー(熱破壊式)
従来からあるレーザーは高いエネルギー量を1回の照射で行います。
パチンとゴムで弾かれたような衝撃と痛みがあります。
これによって体毛の奥にある毛母細胞や毛乳頭など深部の発毛に関わる細胞を熱変性させます。
これを高出力で低速照射するレーザー、熱破壊式レーザー(ショット式レーザー)と言います。
長い間、レーザー脱毛の主役となってきたレーザーです。
一方、出力を落とした弱いレーザーを何度も照射する方法のレーザーがあります。
これを低出力で高速照射するレーザー、蓄熱式レーザーと言います。
痛みが少ないため、脱毛効果が弱いと噂されることが多いです。
このように同じレーザー脱毛でも照射の方法に2つのタイプがあるのです。
左右の脚で両方のタイプの機器を使って比較してみましょう
レーザー機器ですが、脱毛に使われることの多い代表的波長の810nmアレキサンドライトレーザーの2機種を使用します。
蓄熱式のレーザー機器はAlma社のSoprano XLでSHR(蓄熱式モード)で高速照射モードを使用します。
熱破壊式のレーザー機器はLumeniss社のLightSheer ETを使用します。
蓄熱式では5-10 J/cm2の10Hzという低出力高速照射を設定します。
熱破壊式では25-40 J/cm2という従来の高出力で設定します。
試験される患者さまは肌の色が様々な海外の患者さまです。
黒人から白人まで含まれています。
日本人は中間的な肌の色です。
肌の色によってレーザー脱毛は結果が変わるので、様々な肌の色の患者さまでこのようにテストするのです。
25人の患者さまの左右の足でそれぞれのレーザー機器を使い分けました。
評価するタイミングは永久脱毛が出来ているか知りたいので、5回の照射が終わってから6カ月後です。
この結果はどうなったでしょうか。
体毛の数を調べてみます。
その結果、両方のレーザー機器で86%~91%の減毛があったことが分かりました。
80%以上の体毛が減っているということは永久脱毛の定義に該当します。
どちらのレーザー機器も5回の照射でしっかりと永久脱毛に成功しています。
つまり、蓄熱式であろうと熱破壊式であろうと脱毛効果は同じなのです。
さすがレーザー脱毛です。
たった5回でここまで効果があることに驚きますね。
では、副作用はどうだったでしょうか。
熱破壊式レーザーで肌の色が濃い患者さまで一人軽い熱傷が発生しました。
やはり肌の色が濃い患者さまに熱破壊式レーザーは不向きと言えるでしょう。
少し可哀そうですね。
しかし、医学はこのような試験の積み重ねに支えられています。
肌が黒い患者さまには熱破壊式レーザーは使用しない方が良いということが分かると思います。
痛みに関してはどうでしょうか。
やはり圧倒的に蓄熱式で痛みが少ないことでしょう。
お顔の産毛で蓄熱式レーザーと熱破壊式レーザーで比較してみましょう
先ほどは足で試験をしました。足の体毛は太いです。
次は細い体毛のお顔です。
体毛のタイプが違うので、お顔でも同様の試験を行う必要性があるのです。
今回の試験では治療結果が分かりやすいように体毛の濃い患者さまを集めました。
多嚢胞性卵胞という体毛が濃くなってしまう疾患を持つ女性患者さま42人です。
同じく左右でレーザー機器を使い分けます。
お顔の体毛はヘアサイクルが短いので、短めの1ヵ月という間隔でレーザー照射を6回行います。
評価は最後の照射から1ヵ月後の体毛を比較することで行います。
結果は、蓄熱式で90.5%の減毛があり、熱破壊式で85%の減毛がありました。
今回の試験では蓄熱式レーザーの方が熱破壊式よりも脱毛効果は高かったのです。
お顔の体毛は細いという特徴があります。
細い体毛はメラニンというレーザーを吸収する色素が少ないのです。
そのため、レーザーエネルギーの吸収量が少なくなってしまいます。
脱毛効果を増やすために熱破壊式レーザーの出力を上げようとしても限界があります。
一方、蓄熱式レーザーは照射回数で熱量を調整できます。
このため、産毛の脱毛では蓄熱式レーザーの方が効率的なのです。
以上の試験から蓄熱式レーザーは熱破壊式レーザーよりも産毛の脱毛においては効率がよく、通常の体毛では同等の性能を持つことが分かります。
蓄熱式レーザーは凄いの??痛みが少なく産毛でも効率的で色黒でも使用可能!!
2つの試験の結果からすると蓄熱式レーザーはかなりの高性能ということが分かります。
では、なぜ治療効果が低いというデマがあるのでしょうか。
これは推測ですが、以下のような理由があると思います。
①ネット情報には情報源の記載義務がない
今の時代の情報源はグーグル検索が圧倒的です。
検索結果には色々な情報が登場しますが、どれが正しいか正直分からないのです。
記事の多くは記事を書く業者さんが書いています。
そこには正しい内容を記載する義務はありません。
また、一人の医師が感じていることなのか、このような比較試験の結果なのか判別することも難しいかと思います。
②熱破壊式レーザーを使用しているクリニックが多い
以前から使用されているレーザー機器を否定するのは難しいことです。
すでにクリニックに導入されていますから。
自分のレーザーを悪くいうクリニックはありません。
熱破壊式レーザーには大きな欠点があります。
それは価格です。
大手メーカーのレーザー機器の場合は1000万円単位の費用がかかりますが、ハンドピースも数百万円単位です。
しかもハンドピースは消耗品なので定期的に交換しなければなりません。
脱毛専門のクリニックであれば、トータルで数億円単位の買い物になることも珍しくありません。
そのため、依頼を受けるライティング業者さんも熱破壊式レーザーの依頼がまだ多いと思います。
③脱毛された体毛の抜け方に特徴がある
熱破壊式レーザーでは照射された直後に体毛が破壊されて飛び出てくることがあります。
高温で体毛が破壊されるのです。
これをポップアップ現象といいます。
このように熱によって破壊された体毛はすぐに抜けてきます。
それに対し蓄熱式レーザーでは体毛が受けるダメージが少ないのです。
蓄熱式の場合は、体毛が抜けて来るにはヘアサイクルの成長期が終わって、退行期、休止期と進んでからになります。
2週間ほど経過してから抜けることが多いですが、基本的に時間がかかります。
抜けるというより生えてこなくなるという感覚に近いと思います。
④登場直後では照射されるレーザーエネルギーが正確ではなかった
蓄熱式レーザーで照射されているレーザーは本当に正確なのでしょうか。
蓄熱式レーザーが登場した当初は照射毎に出力が不安定だったということがあったようです。
そのため、条件によっては本当に治療効果が変わる可能性は否定できませんでした。
しかし、今回解説した文献は2009年、2011年と古いものです。
その後のレーザー機器の進化も目覚ましく、最近の蓄熱式レーザーではこのような問題はすでに解決していると思われます。
やはり蓄熱式レーザーの治療効果は非常に高く、痛みも非常に少なく、肌の色が濃い人でも安全に照射できて、お顔などの産毛にも非常に効果的なのは事実でしょう。