レーザー脱毛器に詳しいモアナレーザークリニック総院長の田坂洋介が医師目線でレーザー機器について解説します。
使用波長は755nm、810nm、1064nmの3波長
ソプラノはイスラエルのALMA社が製造している蓄熱式レーザー機器です。
ALMA社の株式は中国の企業が保有しており、中国企業とも言えます。
このソプラノシリーズは蓄熱式レーザー脱毛機器のベンチマークと言えるほどの圧倒的な存在です。
2008年に蓄熱式のソプラノアイス(Soprano ICE)が登場しました。
これは810nmのダイオード蓄熱式ですが、1波長の欠点を補うために755nmのアレキサンドライトレーザーと1064nmのヤグレーザーのハンドピースに交換できる優れものでした。
今でも蓄熱式のエビデンスは少ないため、エビデンスの多いショット式が優れているという論調があります。
しかし、2008年にソプラノアイスが登場していることを考えるとそのような主張には無理があると言えます。
蓄熱式にはすでに新しいとは言えないほど長い歴史があるのです。
“蓄熱式”という言葉はALMA社が広めたと言っても良いのかもしれません。
2014年には照射口が2cm2のソプラノアイスプラチナム(Soprano ICE Platinum)が登場します。
ALMA社はなんと3つの波長をミックスしてしまったのです。
これが3波長の蓄熱式レーザー脱毛器の発明です。
ソプラノアイスプラチナムは脱毛の質が高く、照射速度も速く、痛みも少ないという魔法のようなレーザー機器でした。
しかし、その後はライバルとなるショット式レーザーも急激に進化します。
ショット式の照射速度が速くなったのです。
ショット式に照射速度で負けないために、蓄熱式では照射量を減らしてしまう行為が多発しました。
そのため、蓄熱式は効果が弱いと言われてしまうこともありました。
照射速度の速いショット式に対して、ソプラノアイスプラチナムはだんだんと遅れを取るようになってしまいます。
照射速度
2018年に照射口が倍の4cm2のソプラノチタニウム(Soprano Titanium)が登場しました。
このレーザーは1秒間に10回もレーザーを照射できます。
つまり、1秒間に40cm2もの面積にレーザーを当てる能力があるということになります。
このスペックは革命的でした。
ショット式と違い蓄熱式は接触冷却が必要です。
そのためにジェルを照射対象の皮膚に塗る必要があります。
当然、拭き取りの時間が必要です。
ショット式よりこの時間分が不利になってしまうのです。
それでも、ここまでの照射速度に進化するとショット式より早いと言えます。
脱毛の質も良く、合併症が少なく、痛みも少なく、照射も早いという不動のポジションに返り咲いたといえます。
このソプラノシリーズは爆発的ヒット商品となり、全世界で大ブームを引き起こしました。
ソプラノチタニウムの特徴とは
幅の広い3波長を同時に出力することができる。
ハンドピースは4cm2と2cm2の両方がセッティングされていて使い分けできる。
1秒間に10回照射することができる。
照射能力が最速。
大きな欠点は価格にある。
今後のソプラノシリーズはどう進化するのか
①低価格化
ALMA社のソプラノといえば確立されたブランド力があります。
王者として各種レーザー機器のベンチマーク的存在となっています。
他社のレーザー機器は価格で勝負をかけて来ています。
同機能で低価格。
これだけでかなり魅力的な機器を作れてしまうのです。
当院が採用しているエクレアプロもそのようなアプローチの商品です。
ソプラノチタニウムとほぼ同性能と言えます。
同性能で価格が安いなら、患者さまはそれを選ぶでしょう。
ソプラノの1つの重要な進化の方向性は低価格化だと思います。
②高速化
もう1つの進化の方向性としてはやはり照射速度だと思います。
照射口のサイズをさらに大きく進化させたいところです。
しかし、単にレーザー素子を大きくしただけでは皮膚の冷却という点で問題が生じます。
例えばメディオスターモノリスでは照射口を10cm2まで巨大化させました。
しかし、照射口が大きくなると痛みが強くなるという現象が起きます。
そのため、照射するレーザーのエネルギーを減らさないといけなくなるのです。
これでは施術速度の高速化は難しいでしょう。
さらなる進化のためには照射口と冷却システムの根本的見直しが必要なのではないでしょうか。
③省エネ化
さらに進化させたいのは消費電力です。
ソプラノチタニウムではかなりのエネルギーを使用します。
そのため、施術する部屋が暑くなってしまいます。
お部屋の温度が上がると機器がオーバーヒートして作動できなくなってしまいます。
当院のように脱毛専門クリニックではこの問題も無視できません。
④安定化
どこのレーザー機器もそうですが、ご機嫌が悪くなることがあります。
このような現象は少なければ少ないほど良いでしょう。
⑤軽量化
ハンドピースは軽ければ軽いほど施術者の負担が少なくなります。
特に10Hzのハンドピースは素早く動かさなければなりません。
1日中、脱毛の作業をしているとかなりの負担となります。
この軽量化もどんどん進化していくと想像されます。
3波長蓄熱式の魅力とは
この機器だけで全てのタイプの体毛に作用することができます。
浅い部位を照射した後に深い部位を狙うような打ち分けを行う必要性はありません。
最初から3波長蓄熱式の機器を使うことで硬毛化もほとんど起きません。
また、どのような肌の色でも安全に照射できてしまいます。
この安全域の広さも特筆すべき特徴です。
とにかく肌に優しい。
アトピーであっても、多少のアザであっても、日焼け肌でも、人種を問わず、優しく脱毛できてしまいます。
ヤケドを起こすこともありません。
美肌のために、火傷を起こすなんてあってはなりません。
モアナレーザークリニックはこの安全性の高さを利用して『痛みの少ない医療脱毛』ではなく、その先にある『高エネルギー照射』にまで辿りつくことが出来ました。
ショット式では考えられない量のエネルギーを体格・体形に合わせて丁寧に照射します。
それでも肌の痛みや荒れはほとんど出ません。
『高エネルギー照射』を安全に行えるのは3波長蓄熱式だからこそなのです。